2015年4月,アメリカH-1B(専門職者)ビザ事情

アメリカで働くために、主に学士を対象とするH-1Bという就労ビザがある。4月1日から5営業日の間だけ申請でき、発給枠は65000件。そのうちシンガポールとチリへの割り当てが6800件あるので、例えば日本人なら58200件での競争だ(院卒者には20000件の別枠がある)。昨年の申請件数は172500件だったのが今年は233000件にも増加した。これだけ多いと審査もたいへんなので先ずはコンピューター抽選となる。“抽選”と聞くと日本人の感覚としては???だが、しかしこれほど公平な方法はないだろう。4月末には抽選結果がでて、それから夏いっぱいかけての審査となり、許可されれば10月1日から就職となる。この4月、ニューヨークから悲喜こもごものline情報が寄せられた。OPT途中で期待が大きいだけに人生の分かれ道だったろう。宅配荷物が自動仕分けされる映像が思い浮かんだ。
一方、日本の状況は。入管統計をみると2013年に留学から就労への在留資格変更件数は12793人が申請し11647人が許可交付された。内容は人文知識・国際業務が7962人と全体の68.4%を占め、技術は2428人で20.8%である。日本の就労ビザ申請要件は大卒者に限らないので専修学校卒者が2390人と交付数全体の20.5%を占めている。この年の留学生総数は135519人(5月1日)で、卒業年次を迎えた人数は知らないが、卒業後の就職が上手くマッチングしていないと指摘されたおかげで、今は盛んに就職フェアが開催されている。
日本の入管は厳しいと言われるが、アメリカはもっと厳しい側面を持っている。日本の留学生は雇用先がみつかれば、自分で申請用紙を記入し、内容に問題なければ在留資格はほぼ確保できるし費用は印紙代4000円ですむ。一方、彼の国は日本の数倍もの学費を払い卒業しても、就職先を探すのは容易ではない。なぜなら移民局への申請にかかる弁護士費用など1万ドルを負担しなければならないからだ。しかも総量規制があり、抽選を潜り抜けてから審査結果を待つまで半年以上かかる。日本の入管は1ヵ月で結果を出してくれる。
先進諸国の人口減少と高齢化が政策課題になっているが、2008年で比較すると、アメリカの人口は304.72百万人、日本は128.07百万人だったのが、2015年には321.24百万人と126.73百万人。なんとアメリカの人口は増加している。(IMF,2015.4)シルバーエイジは増えているが労働人口も増加している、その人材吸引力は、アメリカのどこからくるのだろうか。

今年のハノイは熱い!

先日ハノイに行ってきました。
3月の時は毎日小雨と曇り空。7月は43℃のくもり空!! 
そんな天気をもろともせずにハノイの人々はいつも変わらず、しっかり働いています。慣れもあるでしょうが、生活人の精神力という強さというかなんというかをひしと感じて羽田に戻ってきました。都内23℃の過ごしやすさに、一息つきました。

EPA研究者・ハノイ商工省でプレゼンテーション

9月12日、元九州大学EPA三羽烏と称された大野俊氏(現京都大)平野裕子氏(現長崎大)小川玲子氏(九大)の三氏が初のEPA関連調査のためハノイを訪れた。
AHPは三氏に是非にとお願いして、9月17日にEPA交渉責任者の商工省と国家委員会のメンバーにプレゼンテーションをしていただいた。
EPAインドネシア・フィリピンが抱える問題点を基に、候補者にとってプラスになる送り出し/受け入れについて、示唆に富む内容であった。
大野氏から「なぜベトナムがこの提案を日本に出したのか」と質問があり、担当者は「これからも日本との友好関係を築いていきたい、そのために地道な交渉を二年間続けてきたのです」と。
そしてこの日の夕方、日本では日経新聞夕刊が『日越EPA看護師・介護福祉士、両国合意』との記事が載った。

日本・ベトナムEPA看護・介護交渉団・キャン副大臣とベトナム人看護師の意見交換 5月30日


日越EPA交渉のため来日している交渉団が、交渉の前日で多忙にもかかわらずベトナム人看護師たちの意見を聞く時間を設けてくれました。
日本語学習、国家試験の内容、病院での働きぶり、院内のスタッフ、患者さんや家族の対応など、ベトナムの看護業務にはふくまれてないものもあり、両国の違いの説明に、熱心に耳を傾けてくださいました。交渉団に加わっている保健省代表はたいへん興味を示し、会談が終わってからも話が続いていました。
副大臣から、彼女らの活躍に誇りを感じると、感想をいただきました。
今後の交渉を後押しするような、貴重な時間でした。

日本・ベトナムEPA看護・介護交渉団・キャン副大臣と意見交換 5月27日


日本とベトナムの第三回交渉が5月31日と6月1日に行われます。そのために来日した交渉団(団長:商工省副大臣)の皆さまが奈良東病院をおとずれ、インドネシアとフィリピンEPAの候補生たちと歓談しました。
奈良東病院と関連法人はインドネシアの第一期看護師候補生を受入れてからEPAに積極的に取り組んでいます。就労と勉強をいかに有効に組み立てるか、その現状を紹介し、また候補生自身の感想等をお話ししました。交渉団からも突っ込んだ質問が出て有意義な意見交換ができました。施設見学を予定していましたが話が尽きず、約2時間の歓談が終わりました。

(外国人)看護師臨床修練の活用を!!

EPAインドネシア人看護師の在留期間が一年延長になるのは、この寒い冬にあって、ほんわかと暖かな朗報ですね。ただ、これまでの三年間と同じ「看護助手」として一年延長するのがいいかどうかを考えたいと思います。
看護助手のままでいいから国家試験合格をめざしてあと一年勉強したい、というならそれでいいでしょう。一方で、一年いたいけど看護スキルがダウンするのが心配だ、と言う方もいます。
この方々のためにひとつの方策があります。
それは、厚生労働省が2006年に出した【看護師臨床修練】という制度を援用して、一年延長を意義あるものとするのです。これは外国人看護師が病院内の日本人看護師の指導・監督のもとで看護師として通常の業務ができる、という制度です。日本の看護師免許がなくても、本国の看護師免許で日本の病院で看護師として患者さんに看護できるのです。ただし一年間だけです。
そうすれば、もし来日4年後に帰国する事になっても、一年間看護業務をすることでスキル低下を心配しなくても、いやむしろ日本の看護のいいところを実地に学ぶことができます。

AHPは、ベトナムEPAにはこの制度を取り入れた提案をしています。

同様に、外国人医師対しては「医師臨床修練」というのがあり、こちらは二年間の在留が認められています。処方箋の交付ができないだけで、院内で患者さんに診療をすることができます。
AHPは2007年から5名のベトナム人医師を日本に招いて、医療を学んでいただきました。皆さん優秀な若いドクターたちでした。そのうちの一人は、現在東京医科歯科大の大学院に進み、さらに研究に励んでいます。

EPAで来日したインドネシアやフィリピンの看護師たちに、ぜひ「看護師臨床修練」ができるよう、皆さまに提案したいと思います。

ベトナム国会社会委員会とのEPA意見交換

12月16日に、ベトナム国会社会委員会副議長のグエン ヴァン ティエン氏を団長とする社会保障に関する視察団8名が袖ヶ浦さつき台病院を訪問しました。ここで働くベトナム人看護師たちがアテンドして病院や介護施設を見学し、昼食をとりながら、看護部長がさつき会の外国人人材活用とインクルージョンの理念をプレゼンしました。
私は、ちょうど今日ハノイで交渉が始まった日越EPA看護・介護の概要を説明し、国会からの応援を頼みました。ホットな話題で、しかもベトナム人看護師たちが働いている病院でもあり、議員団の質問もこの問題に集中しました。同行した㈶アジア人口・開発協会もEPAには強い関心を持っており、インドネシア、フィリピンの失敗を繰り返さないためにどのようなスキームがあるのか、意見交換の場となりました。
また先月30日には念願の看護師ビザの在留期間制限が撤廃されところであり、国家資格を持っていれば継続して働くことができるようになった経緯を説明すると、一言「研修生制度と同じですね」と。なるほど、そういう見方もできるんだと思った次第です。
「医療」を高度人材に位置づけながら在留制限を課していた政策意図は、那辺にありや。制限撤廃を求めたベトナム人看護師たちに、日本の政策を順守せよ、と発言した日本看護協会。日越EPAでこの構図に変化をもたらすことができるかどうか。もしできないとなれば、この国の多文化共生を医療や健康面からサポートする人材は今後も生まれないでしょう。